中央ろうきん助成プログラム

選考結果
2017年助成の選考について

選考委員長による選後評

選考委員長 薬袋 奈美子

選考委員長

薬袋 奈美子

日本女子大学 家政学部 住居学科 准教授

認め合う力

市民活動の担い手には、仕事や子育てが一段落した人が多く、60歳代が若手だと言われることも少なくありません。確かに、本プログラムへの応募団体にも、そのような年齢構成のグループは多いです。しかし、今回、選考をする中では、若い人、それも20歳代30歳代といった人も多いと感じました。本プログラムが、中央労働金庫の社会貢献事業であり、募集要項にも"働く人が、自らの経験を活かして参加する活動"であることを謳っていることが背景にあるのかもしれません。これは、他の助成プログラムにはない特長ではないでしょうか。

働く人は忙しいです。それでも、自分達の生活の中にある課題や、身近な社会の課題を解決するために、仲間を見つけ、活動を始めていることは本当に素晴らしいことです。そして、忙しくてもこのような活動を続けることができるのは、お互いの活躍を認め合っているからではないかと感じました。

特にスタート助成3年目、ステップアップ助成については、書類選考を通過した団体に対して、選考委員との対面での審査が行われます。やはり対話をすると、その団体の活動の様子や、仲間の関係が書類で見ている以上によく伝わります。市民活動は、一人だけでは継続的な地域に根付いた活動には発展しません。団体内でお互いの力を認め合える関係を築けている団体は、活動が着実に広がっているのではないでしょうか。忙しい中でも働く世代が応募し、助成を受けられるようになるためには、そのようにお互いに認め合い、信頼しあって役割分担を行い、そして必要に応じて取り組み方を改善する柔軟性が必要なのです。

さて、今年の選考の場で議論になったことを2つ紹介したいと思います。一つ目は、継続応募についてです。本助成の特長は最大4年間かけて、団体を育てていくことにあります。募集要項にイメージ図がありますが、最初の3年間は少しずつ団体が成長することを期待し、ステップアップ助成では、持続的な展開に向けてしっかりと活動を根付かせるために助成をするという意図があります。

選考の際には、その点を改めて意識して評価させていただきました。継続助成においては、試行錯誤をしながらの応募内容で構いませんが、前年と同じことを淡々と継続するのではなく、その取り組みが次に発展していくためのものであるのかどうかが問われます。更に、ステップアップ助成では、助成期間終了後の見通しについて、プレゼンテーション時に質問をさせていただき、審議においてもその点が議論されました。

もう一点議論されたことは、助成することの意味についてです。一般的に助成プログラムは、活動に必要な資金を提供します。しかし、今年のスタート助成2年目以降の応募団体の中には、自立的な運営ができ、本助成がなくても継続的な活動が実現するであろうと思われる団体が散見されました。これは、素晴らしいことですが、限られた助成財源を考えた場合に、選考においては、どうしても、より助成を必要とする成長過程のプロジェクトを優先せざるを得ません。自立的な運営が見込まれる団体に対しては、助成ではなく、その成長努力を称えるような賞を授与する形が相応しいのかもしれません。

これまでのスタート助成1年目の応募データを比較すると、次第にNPOの法人格を持つ団体の応募が減少し、任意団体からの応募割合が増えています。これは言い方を換えれば、本プログラムを受けることが、社会的な信用を得る看板として利用していただけることを意味します。これはまさに冒頭でお伝えしえた"認め合い"を組織間で行っているとも言えます。

お互いを認め合い、活動を地域に根付かせ、高めあう仲間をどれだけつくることができるのか。それが日本で市民活動が根付き、生活が豊かになる鍵です。