中央ろうきん助成プログラム

選考結果
2019年助成の選考について

選考委員長による選後評

選考委員長 黒河 悟

選考委員長

黒河 悟

労働者福祉中央協議会 副会長

「活動のストーリーを描いて、多くの人と共有化をしていこう」

「中央ろうきん助成プログラム」の新規募集が終了して2年。今回は、スタート助成3年目とステップアップ助成のみの選考となりました。昨年の12月に「フォローアップミーティング」という中間報告会が実施されたこともあり、選考委員にとっても応募団体の活動にはなじみがありました。そのため応募用紙を読んでいてもさまざまな活動の情景が頭に浮かび、これまで以上に熱のこもった選考委員会になったように思います。

さて、スタート助成3年目の応募は9団体で、書類選考とポスターセッションによる選考を行いました。どの団体も着実に成長しています。「“ひと・まち・くらし”づくり」というこの助成プログラムの主旨・目的をしっかり受け止め、地域の課題やニーズに応えることを単なる繰り返しで行うことなく、新たな課題の発見や活動への挑戦に意欲が感じられました。今回の助成の採択・不採択は、活動評価の良し悪しだけではありません。どちらかというと、「もうこの支援がなくても自立できる団体に成長している」、「助成することが団体飛躍の先延ばしになりかねない」など、団体やその活動への期待が大きかった故の不採択であったと言っても良いかもしれません。スタート助成3年目に応募されたすべての団体にエールを送り、これからの活動に期待したいと思います。

次に、7団体の応募があったステップアップ助成は、書類選考とプレゼンテーションによる選考を行いました。今回の選考では、スタート助成で蓄積した活動の中で見えてきた課題を捉えているか、活動やそれを支える組織(団体)を「こうステップアップしたい」というビジョンがより明確になっているか、そしてそのためにこの助成が必要か、ということが論点になり、採択の分岐点となったかと思います。どの団体も地域ニーズに寄り添うとともに、現代社会が抱えるどこにでもある課題に正面から向き合ってきた意義ある活動を進めていることに間違いありません。ステップアップ助成に応募されたすべての団体が、スタート助成での経験を大切に、今後更なる活動を展開していくことを期待したいと思います。

選考全体を通じて感じたことを述べさせていただきますと、昨年の選後評の表題は「周りにある宝を大切に、もっと繋がろう人と地域と」と付けました。そして、「代表者や事務局がひとりで請け負うのではなく、みんなの知恵や力を借りること」、また「地域の他団体との繋がりを自分たちから積極的に求める」ことを訴えました。1年間ですぐに効果がでるとは決して思いません。時間がかかります。だからこそ、地道にこのことを意識して活動していくことが大切です。今回の選考を通じても、このことがしっかり出来つつある団体がある一方、「活動の担い手が固定し、広がりが見られない」、「連携団体の広がりに欠けている」などの指摘がある団体もありました。このことを念頭に置いて1年間活動を進めていただき、特にスタート助成3年目の団体は是非、次年度のステップアップ助成の応募に挑戦し、成長した姿を見せていただきたいと思います。

今、日本の社会は富の一極集中が進む一方、格差や貧困がより拡大・深刻化し、また社会の分断・孤立化も進み、自己責任論がますます強まっています。私たちが「働き、暮らす」社会が危機に瀕していると言っても過言ではありません。今こそ、この私たちが働き暮らす社会を強くしていくことが求められていると言えましょう。社会を強くするには、地域の人に寄り添い支えあう活動をする労働組合や協同組合、そしてNPOのような市民活動団体がたくさんできて活発に活動していくことが、地域や人々の暮らしを守るために大切です。その意味でも、この中央ろうきん助成プログラムが団体の育成に果たしてきた意義は大変大きかったと思います。このプログラムの経験を是非有効に受け止めて、次に生かしていただきたいと考えています。