中央ろうきん助成プログラム

選考結果
2020年助成の選考について

選考委員による所感

選考委員 岩井 俊宗
特定非営利活動法人 とちぎサポーターズネットワーク 代表理事

どの団体もこれまでの活動を積み上げ、活動のさらなる発展を描いた応募内容でした。ステップアップ助成という性質上、助成ができる最終年であり、助成がなくなってからも自らの力で活動を継続発展しうる使い方になっているかを見させていただき、評価いたしました。活動の安定化を感じつつも、仲間や支援者を広げていく動きも期待しています。

今、新型コロナウイルス感染症の流行禍において、我々が大事にしてきた人と人のつながりが分断されています。私自身、市民活動に携わる者として、今一度の人と人がつながりあうことの価値を再定義し、安全を担保しながらも分断以上の価値があることを証明していく役割があると思っています。まさに“社会の荒波の中でこそ問われる市民活動の意義” が問われています。

採択有無に関わらず我々市民活動組織は社会の切込み隊長の役割として、小さな声を紡ぐ「虫眼鏡機能」、それを大きく発信していく「拡声器的機能」、そして市民意識と行動変容を起こしていく「意識変革装置機能」を、この社会の荒波の中でこそ強く持ち続け、また常に未来の理想とアイデアを持ち、仲間を信じて、共によき未来に向けて進んでいきましょう。

選考委員 上田 英司
認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 事務局次長

今年は、ステップアップ助成のみの選考となり、非常に悩みました。スタート助成がはじまってから3年間、パートナーミーティングやフォローアップミーティングで、団体の皆さんとお話をする機会があり、活動の背景や熱意、工夫なども十分に知った上での選考だったということがありました。

選考の過程で立ち返ったことは、ステップアップ助成の意図でした。シンボルマークは、立派に咲く『大きな花』です。すでにある団体の“力”と、<中央ろうきん>の助成金という“肥料”とが合わさり、活動が展開・定着し『大きな花』が咲くことを願ってデザインされています。

活動を展開・発展させていくためには、活動だけに注目してはいけません。それを支えるための組織基礎がより重要です。組織基盤がつくられていくと、困難なことに直面したとしても、手伝ってくれる人たちが出てきてくれるはずです。基盤を一緒につくってくれる会員や協力者、連携団体との対話をおこなっていただきたいと思います。

社会的に認知が少ない課題への取組みは、壁にぶつかることが多いと思います。しかし、その壁を乗り越えようとした取組みは、次の団体への示唆になります。ぜひ、その取組みを広く発信していただき、市民活動がより豊かになっていくことを期待しています。

選考委員 佐藤 繭美
法政大学 現代福祉学部 福祉コミュニティ学科 教授

今年のステップアップ助成の選考は、新型コロナウイルス感染症の影響によって、各団体の皆様とお会いしないまま、進める形となりました。選考する者としては、これまで3年間の実績を拝見してきましたので、応募書類からは、各団体の意気込みや発信力、地域とのつながる力を想像することができ、このプログラムの【つながる】助成の仕組みは、不測の事態にも耐えうる素晴らしい仕組みであったことを痛感いたしました。

さて、私の選考における評価のポイントは、「組織の自由度」です。応募される団体は、ステップアップ助成にまで登りつめてくると、熱意は当然のこととして兼ね備えており、それをいかにして、社会貢献へと形づくっていけるかがポイントになります。この助成の趣旨に照らし合わせると、「ひと・まち・くらし」を見据え、その三本の柱がバランスよく機能していることが求められてきます。さらには制度と制度の狭間にいる人たちに目を向け、真摯に手を差し伸べる団体が、私たちの社会には強く求められています。そこに着目し、組織のあり方を柔軟に変化させながら、これまでに培った人脈などを駆使し、社会に貢献している団体を私は高く評価させていただきました。

ステップアップ助成に応募されたすべての団体の活動は、社会になくてはならない活動です。誰も手を出さないところに、心を痛め、活動を始めた皆様の熱意に心から敬意を表します。そして、私もこれから応えていきたいと改めて決意させられました。

選考委員 岩村 真奈美
中央労働金庫総合企画部(CSR) 上席調査役(主幹) ※2020年2月現在。

今年で最後となる選考には、改めて、本プログラムのステップアップ助成の趣旨や目的を確認してから臨みました。そして、応募書類にこれまでの活動の成果や3年間の蓄積が4年目の活動にどのように活きているか、さらにその先の助成期間終了後の未来を描けているかに注目して選考しました。

応募団体の活動は、地域に必要なのに足りないことや、自分たちが主体的にこんなことできたらいいなという想いを形にする取組みで、どれも等しく価値があり、すべてを応援したいと思う一方で、事務局を兼務する立場として、本プログラムの趣旨に合致しているかどうかを特に意識しました。

これまで私が選考委員兼事務局として、最も大切にしてきたのは最長4年間継続して助成金を得るために、団体自らが活動のトライアル・アンド・エラーを実践しているかという点でした。そしてそれは、助成期間中のポスターセッションによる中間報告会や次年度の応募に向けたワークショップなどで、選考委員や事務局が団体に発信してきたことでもあります。その意味で、今回の採択結果は、本プログラムの趣旨を的確に受け止め、応募用紙に表現することができているかがポイントだったように思います。

本プログラムは2020年を以って終了となりますが、数多ある助成制度の中から本プログラムを選び応募してくださった団体の皆さまと、選考に関わってくださった歴代の選考委員・予備審査の皆さまと共に創り上げてきたと思っています。皆さま、本当にありがとうございました。