中央ろうきん社会貢献基金 助成事業のあゆみ
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避難者に寄りそい、課題の解決へ総括REPORT改めて、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故とは 2021年3月で丸10年を迎える東日本大震災ですが、どのような出来事であったか改めて確認しておきたいと思います。東日本大震災は2011年3月11日14時46分ごろに宮城県沖で発生したマグニチュード9.0の地震であり、死者数は1.5万人、行方不明者は7.5千人で、日本国内観測史上最大規模の地震でした。福島第一原子力発電所事故はこの東日本大震災の津波により、炉心溶解(メルトダウン)が発生し、大量の放射性物質の漏洩を伴う重大な原子力事故へと発展しました。 この原発事故の影響により、避難指示区域に指定された地域の住民は強制的に避難を余儀なくされました。関東圏(1都7県)にも地震、津波、原発事故により、多い時期で3万人以上の方が避難されました(左ページ下表)。2020年8月現在、帰宅困難区域は徐々に解除されているものの、帰還率は高くなく、地域よっては数%に留まっています。本助成制度が避難者支援にどのように役立ったか 本制度は2つの大きな役割を果たしたと言えます。1つ目は避難者同士が自らコミュニティを形成し、お互いが支え合う当事者同士のコミュニティ形成の後押しです。避難者同士が自ら連絡を取り合い、将来への不安をお互い語り、必要なことを自分たちで見出したという点において、非常に意義のあった制度でした。 2つ目は、様々なコニュニティがあるということがわかったことです。被災元が同じ、あるいは被災元関係なく被災地におけるコミュニティ、母子避難のように環境が似た、あるいは同じ趣味をもつなど、多様なコミュニティの存在があることがわかりました。これにより課題の違いが明らかになり、解決するための方策の検討に役立ちました。 この制度が特徴的だったのが報告会です。つながりづくりを促進し、分野を超えた団体同士のつながりが育まれ、一緒にイベントを行うなど発展しました。東日本大震災支援全国ネットワーク事務局担当 杉村 郁雄広域避難者の抱えている課題の現状 広域避難者支援の課題を考える上での難しさは、外部の環境変化とそれを受け止める避難者の心境が複雑に絡みあい、時間の移り変わりとともに課題も変わりゆくところです。住宅貸与の終了、避難指示区域の解除、引っ越しを余儀なくされた結果、新たな場所に馴染めるかといった不安など、10年という時間経過にともない、避難者が「苦しい」「困っている」という声を挙げたり語れる場がなくなってきていること、苦しさを自分で抱え込み、精神的に負担を強いられることも大きな課題です。10年を迎えていても避難者の「苦しさ」は、変わらず避難者の中にあることを認識することが大切です。今後の避難者支援について 今後の避難者支援に求められることは大きく2つあります。一つ目は、改めて避難者が現在どのような立場に置かれているのか、どのような心境にあるのか理解を深めることです。課題でも述べたとおり、避難者への無理解が避難者を苦しい状況に追い詰めているということを認識する必要があります。  二つ目は、避難している地域で支援できる体制をつくることです。避難者支援の制度そのものがなくなってきている今、いかにして、地域で見守れるかが避難者支援の大きな課題の一つです。私たちは避難者が近くにいるということを認識し、避難者について知り、避難者が安心していられる居場所を作り出すことが今後に求められることではないでしょうか。いわき市小野町相馬市福島第一原子力発電所南相馬市広野町大熊町伊達市二本松市H27.9.5避難指示解除準備区域を解除H28.7.12避難指示解除準備区域及び居住制限区域を解除飯舘村H31.4.10避難指示解除準備区域居住制限区域を解除H29.3.31避難指示解除準備区域及び居住制限区域を解除H29.3.31避難指示解除準備区域及び居住制限区域を解除H29.4.1避難指示解除準備区域居住制限区域を解除【双葉町】避難指示解除準備区域⇒解除(R2年3月4日)20km帰還困難区域避難指示が解除された区域凡例原子力発電所福島第二田村市H26.4.1避難指示解除準備区域を解除葛尾村H28.6.12避難指示解除準備区域及び居住制限区域を解除浪江町双葉町川俣町H29.3.31居住制限区域を解除避難指示解除準備区域及び南相馬市楢葉町富岡町経済産業省の避難指示区域の概念図令和2年3月10日時点川内村H26.10.1避難指示解除準備区域を解除居住制限区域を避難指示解除準備区域に再編→2016.6.14避難指示解除準備区域を解除大熊町広域避難者地域活動サポート助成制度制度概要および助成実績・総括レポート28中央ろうきん社会貢献基金助成事業のあゆみ−

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