投資信託はどう選ぶ? キーワード『ESG』に注目 投資信託はどう選ぶ? キーワード『ESG』に注目

投資信託はどう選ぶ?
キーワード『ESG』に注目

最近、資産運用をする上でキーワードになっている「ESG」。ESGは、持続可能な社会の実現に向けて、SDGs同様、とても重要な観点です。これからの時代、投資をする上でも目先の利益に惑わされず、長期的に成長し続ける企業かどうかを判断することが大切です。そこで、今回は、今注目されているESGの概要やESG投資のメリット・デメリット、初心者の方におすすめの投資法までお話しします。

なぜ、資産運用が必要なの?

ESGについてお話しする前に、これからの時代、なぜ資産運用をする必要があるのか、その主な理由からご説明します。

世界の中でもトップクラスの寿命を誇る日本。厚生労働省の「令和2年完全生命表」によると男性の平均寿命は81.56年、女性は87.71年と過去最高を更新しています。このような長生きの時代は老後の期間が長く、将来に備えてお金をしっかりと貯めておく必要があります。

とはいえ、現在の普通預貯金の金利はメガバンクで0.001%。100万円を1年間預けても利息は10円(税引後8円)と、スズメの涙程度です。預貯金だけではなかなかお金は増えません。

また最近は、インフレ(インフレーション)の状況が続いています。インフレとは、世の中の物やサービスの値段が全体的に上がること。わかりやすく言うと、今まで100円で買えていたものが150円を出さないと買えなくなるといった具合です。言い換えれば、お金の価値が目減りする状況ということです。

たとえば年率2%のインフレになった場合、1,000万円を銀行に預けていたとして、現在と比較するとその資産価値は10年後で817万円、20年後で667万円、30年後で545万円、40年後には445万円と半分以下になってしまいます。
インフレでもお給料が上がれば良いのですが、現在は残念ながら好景気でインフレになっているわけではないので、お給料が上がりにくい状況です。ですから、資産運用で物価の上昇分以上にお金を増やしていく必要があります。

インフレで預貯金減少

今注目のキーワード「ESG投資」とは

SDGsとESG

最近、資産運用の世界で注目を浴びているのが「ESG」です。「SDGs」と一緒に語られることが多い言葉ですが、用いられる文脈や対象が異なります。まずは両者の意味と違いから見ていきましょう。

SDGsは、2015年の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。
SDGsには貧困や雇用、気候変動、環境、社会問題を解決するための17の目標と各目標を具体的に落とし込んだ169のターゲットが定められています。2030年までにこれらを達成すべく、国連加盟各国でさまざまな取り組みがなされています。

個人でも「詰め替えできるボトルやカップを使う」「電気、水道などの節約を心がける」などを実践することでSDGsに取り組むことができます。

SDGs17の目標

一方、ESGとは、構成される3つの要素「環境=Environment」、「社会=Social」、「企業統治=Governance」のそれぞれの頭文字をとったもので、SDGsが世界中の「人」が力を合わせて取り組む目標なのに対し、こちらは「企業」が取り組むべき課題のことです。3つの要素の具体的な内容は以下の通りです。

・環境=Environmentは、温室効果ガスの排出量削減、海洋プラスチックゴミ対策や水質汚染対策、再生可能エネルギーの活用など

・社会=Socialは、ジェンダー格差の撤廃や労働者の権利の保護、ダイバーシティやワーク・ライフ・バランスの実践など

・企業統治=Governanceは、企業の業績や評判を悪化させる不祥事などを回避するための法令順守(コンプライアンス)の姿勢や情報開示の透明性など

ESGの3つの要素

これからの時代、企業が長期的に成長し続けていくためには、ESGの観点を取り入れた経営をすることが必要だという考え方が世界中で広まっています。

ESG投資とは

ESG投資とは、企業の売り上げや利益、キャッシュフローなどの財務情報に加えて、ESGを構成する環境、社会、企業統治の3つの観点から企業を分析して投資することです。

近年ESG投資への注目が高まってきている背景には、世界的な異常気象や環境破壊、地球温暖化への対応、脱炭素社会への動き、ジェンダーフリー、女性活躍の推進などに対する意識の高まりなどがあります。短期的な利益追求のために生産活動をするよりも、環境や社会への配慮をしながら長期的に活動をすることが企業に求められているのです。

これまで投資家は、財務状況や業績などの経営状況を示すデータを元に投資先を決めるのが一般的でしたが、近年は投資先の判断基準としてESGへの取り組みを重視する人が増えています。

年々、投資金額が増え続けるESG投資!

ESG投資に関するデータ集計を発表している国際団体「世界持続的投資連合(GSIA)」の調査発表によると、2020年における世界全体のESG投資額は約35兆3千億(当時のレートで約3,900兆円)に達し、2018年比でみると15%増加と、ESG投資が注目されていることがわかります。

ESG投資の投資額を押し上げた国はアメリカです。旗手であったヨーロッパを上回り、過去2年で42%増の17.1兆ドル(当時のレートで約1,900兆円)となっています。日本でも2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、投資にESGの視点を組み入れることなどを原則として掲げる国連責任投資原則(PRI)に署名したことをきっかけにESG投資は浸透してきています。

今後ますます環境問題や社会問題への関心が高まっていくのに伴い、ESG投資も拡大していくことが予想されます。

世界のESG投資残高の成長

ESG投資のメリット・デメリット

では、ESG投資のメリット・デメリットを見てみましょう。

●メリット

ESG投資の主なメリットは、「長期の資産形成に向いている」ところです。そもそも企業が長期にわたって利益を出し続けるためには、ESGに配慮しなければ実現の可能性が乏しいと考えられます。

「環境に配慮した商品を作っている」「女性社員の産休や育休制度の充実など、従業員への福利厚生が手厚い」といった、環境問題や社会問題の解決に対して行動をとっている企業は、SDGsの達成に向けて貢献しており、中長期的に見て企業価値が高く成長が期待できる企業と言えます。加えて、投資家からも評価されやすい傾向にあります。

また、ESG投資をすることで、地球温暖化防止や女性活躍に取り組む企業を応援することにもなります。私たちの投資資金が間接的に社会貢献につながっているのです。

●デメリット

ESG投資の主なデメリットは、短期間では利益が得にくいという点です。ESG投資の投資先は、短期間に大きな利益を狙う企業ではなく、ESGの課題に取り組む優良企業です。そもそもESG自体が長期的な課題であり、短期間で解決できる問題ではありません。

またESG投資の場合、財務情報等に加えてESG要素の分析・評価をする必要があります。財務情報の知識に加えて、ESGの要素を見極めるための資料を集めたり、資料を分析したりするなど労力もかかり、個人で銘柄を選ぶには難易度が高いでしょう。

投資信託イメージ

ESG投資を始めるには? 初心者には投資信託がおすすめ

では、投資初心者がESG投資を始めるにはどうしたら良いのでしょうか?
ESG投資には、株式投資や投資信託などの方法があります。株式投資はESGの要素を重視する企業を調べて個別銘柄に投資する方法ですが、個人で投資先を分析・評価して選ぶのは簡単ではありません。そのため、投資初心者がESG投資を始めるには投資信託がおすすめです。運用のプロであるファンドマネージャーが銘柄選択をしてくれることに加えて、少額から幅広い企業に分散投資をすることができます。

中央労働金庫ではESG関連の投資信託商品がこちらに掲載されていますので、ぜひ、参考にしてみてください。

人生100年時代を充実して生きるために、資産運用を検討する必要性が高まっています。ESG投資を通じて社会貢献をしながら、長い目でみて資産を育てる方法も選択肢の一つ。資産運用は、やってみようと思った時が始め時です。投資信託は少額からスタートできますから、ぜひトライしてみましょう。

  • ※このコラムは、2022年6月現在の情報を基に作成しています。

プロフィール

高山 一恵

(株)Money&You取締役/
ファイナンシャルプランナー

高山 一恵 (たかやま・かずえ)

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー1級
慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立し、10年間取締役を務めた後、2015年から現職。女性向けサービス、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場『FP Cafe』の事業に注力。全国で講演・執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。