コロナ禍でもつみたてNISAをおすすめする理由は?

2020年3月、世界で新型コロナウイルスの感染が広がり、日本でも海外でも株価の大幅な下落がありました。「投資をしていなくてよかった」と胸をなでおろした人もいるかもしれませんが、ファイナンシャルプランナーの中村芳子さんは「今は投資をしていない方がリスクが高い」と話します。その理由と、初心者におすすめの投資の方法についてうかがいました。

言い切れない「投資をせずによかった」

コロナの影響により世界中で一時株価が暴落しましたね。損をしなくてよかった、投資をしていなくてよかったと思う人もいるかもしれませんが、投資はやっておいた方がいいと私は思います。投資をすると、世界の経済に目が向くから、今、どんな状態になっているかに自然と意識が向き、景気動向に敏感になれますからね。

投資を始めるために、まとまったお金は必要ない。退職してから投資を始めようと思う人は多いけれど、できる限り若いうちから始めてほしいと思っています。若い時に少ない金額で投資を始めたら、損をしても時間をかけて取り戻せるし、失敗や損からたくさんのことが学べます。

実はこれがとても大切。投資の経験がないまま50代、60代になって、まとまった金額で間違った投資をしてしまう人がかなりいるんです。そうならないためにも、私は若いうちから投資をして、金融の知識をつけていくことをすすめているんですよ。

言い切れない「投資をせずによかった」 言い切れない「投資をせずによかった」

株価が下がってもつみたてNISAを始めた方がいいワケ

もし、20代、30代の人が今、投資を始めるならつみたてNISAがおすすめです。つみたてNISAは、投資信託で毎月一定額を積み立てていく投資法。金融機関によって違いますが、月5,000円や1万円からできて、時間をかけて資産をつくっていくのに最適の方法です。普通は値上がり益に20%の税金がかかるのが、つみたてNISAなら毎年40万円まで20年間非課税になるのが魅力です。途中で積み立てを休んだり、貯まったお金を引き出したりすることもできます。

ただ、2020年2月までは日本も世界も株価が上がっていたので、株価に連動する商品で積み立てていた人は利益が出ていましたが、2020年3月の暴落ではたいていの人は損が出てしまったはずです。結局、半年ほどで株価は回復しましたが、投資初心者の方の中には、今回のような株価下落で一度損が出てしまうと、怖くなって慌てて解約しようとする人が出てきます。でも、ちょっと待って。慌てる必要はないし、早まって解約することもおすすめしませんよ。

それは、つみたてNISAは投資信託の基準価額が高い時も低い時も一定額を買うので、長く続けることで損が出にくく、利益が出やすくなるから。もともと5年、10年、20年かけて資産をつくる手段ですから、1、2年で解約してしまうと、その目的が果たせなくなってしまいます。基準価額が低い時も買い続けるし、その時には数多く買うことができるから、たとえ一度損が出ても、株価が戻ってくればプラスになる可能性は高いですよ。

だから、有事のときに株価が暴落しても、じっと耐えて、積み立てを続けることをおすすめします。「怖くて、そんなの無理!」という人は、積立額を減らして半分にしてもいいでしょう。その分、株価が上がったときの戻りは小さくなってしまいますけどね。

どれくらいの金額からスタートしたらいい? どれくらいの金額からスタートしたらいい?

どれくらいの金額からスタートしたらいい?

これからつみたてNISAを始めるなら毎月、積み立て貯蓄する分の一部を、投資におきかえるのがおすすめ。月2~3万円貯蓄している人なら、そのうち1万円をつみたてNISAにするといいですね。ただし投資を始めるのは、緊急資金として給料の6カ月分を貯めてから。貯蓄が全くないのに投資にまわしてしまったら、急にお金が必要になったとき、投資信託を解約することになって、ちょうど値下がりをしていたら損をしてしまいますからね。

繰り返しになりますが、つみたてNISAは、年間40万円までが非課税。貯蓄が十分ある人は上限まで、月3万円とか3万3,000円を投資にまわすといいと思います。そのときは、一つの投資信託ではなく、国内株と海外株など二つ以上の投資信託を組み合わせてください。組み合わせることで、リスクを分散することができますよ。

将来の「夢」を叶えるため、今から資産づくりを!

つみたてNISAは、いつでも出金が自由にできるのも魅力。30代から40代にかけて、起業や留学で自分の夢を実現しようとする人、子どもの教育資金が必要となる人も増えてきます。また、結婚や家の購入資金が必要になることもあります。5年後、10年後のことを考えて貯めるときに、その一部に投資を組み入れるといいと思いますよ。将来の自分への素敵なプレゼントになるはず。

ただし、投資にまわすのは5年か10年以上使う予定のないお金の半分までが目安。これで株価が値上がりするときは十分に儲けが出るし、株価が値下がりしても損を小さく抑えることができます。投資を通じて日本と世界の経済、政治、さまざまな出来事を観察して学べば、視野が広がって仕事や日々の生活にもプラスになるはず。大切なのは、常に少しずつ投資してマーケットに関わっていくこと。投資することで、自分の財産が世界の経済とつながっていることを実感することもできます。楽しみながらお金を増やしていきましょう!

  • ※この記事は朝日新聞社が運営しているウェブメディア「telling,」の掲載記事を再編集しました。
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プロフィール

中村 芳子

ファイナンシャル
プランナー

中村 芳子(なかむら・よしこ)

東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)、『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。