中央ろうきん若者応援ファンド

インタビューコラム
いま、なぜ若者応援が必要なのか?第3回

第3回

劣悪な労働環境にNOと言い始めた若者たち。もう通用しないデフレ下のビジネスモデル

作家 雨宮 処凛さん

あまみや・かりん
作家。2006年9月から、「ビッグイシュー日本版」で連載コラム「世界の当事者になる」を連載中。

このところ、飲食店チェーンが人手不足に陥っていますが、これは時給が上がってもそこが過酷な労働の場であることを、労働者がよく知っているからです。某チェーンのひどい労働環境から若者たちが逃げ出したように、そんな職場では働かないと若者は言えるようになってきた。非正規労働者を低賃金で使い捨てるデフレ下のビジネスモデルが通用しなくなってきています。

一方、5月15日には米国の労働組合の呼びかけで、ファストフード店の労働者に公正な賃金を求める「ファストフード世界同時アクション」が35ヵ国以上で行われ、米国ワシントン州の最低賃金が15ドルに引き上げられました。

日本はもともと国連から勧告を受けるくらい、先進国で一番、最低賃金が低い国です。有効求人倍率が1.52と上がっても、状況は変わっていません。新卒で就職できた場合でさえ、今や大学生の2人に1人が奨学金を受けていて、卒業した途端に500万円とか800万円の借金を抱えた状態では結婚もままならない。

にもかかわらず、若い人ほど、本当は死にそうでも「大丈夫です」と言って支援の手を拒絶しがち。子どもの頃から、親や学校が「迷惑をかけ合って生きるのが人間の自然な姿」だと伝え、「助け」を求められるような社会環境が必要です。

今の若者の状況を放置すれば、日本の労働環境の地盤沈下はさらに進みます。中央ろうきんが、そこへ踏み出してくれたのはうれしいかぎりです。

「ビッグイシュー日本版」第243号(2014年7月15日発売)より転載