中央ろうきん若者応援ファンド

インタビューコラム
いま、なぜ若者応援が必要なのか?第6回

第6回

どんな制度や地域資源が使えるか
トータルに見る力のあるサポーターが若者支援の現場にも必要

放送大学副学長 宮本みち子さん

みやもと・みちこ
1947年生まれ。格差拡大するポスト工業化社会の中で不利な状況に置かれ、学校や就労から排除される若者の問題を研究。著書に『若者が無縁化する――仕事・福祉・コミュニティでつなぐ』(ちくま新書)など。

日本は、90年代から00年代にかけて大きな時代の転換点を迎えました。年金制度や医療保険制度や社会福祉制度によって「国が国民の暮らしを守る」という福祉国家のスタンスが崩れ、自己責任論が強化されてきたのです。

高学歴化と厳しい労働市場の中で、若者の境遇は家族で左右されます。親に経済力や情報収集能力がある子どもは、学歴と語学力を身につけグローバルな世界へ出ていくこともできます。一方の貧困家庭では、親は子どもの教育をあきらめ、子どもは早期に実社会へ出ても安定した生活基盤を築くことができません。また、心身の疾病や障害などのさまざまな生きにくさを抱えている若者は、社会の流れに乗れず、安定した暮らしも社会関係も得ることができないのです。

介護分野で担当エリアのすべての高齢者に気を配る地域包括支援センターのように、医療・福祉・日常生活に至るまで、若者のニーズを幅広く受け止め、制度横断的に支援ができる仕組みが必要です。

アウトリーチ(訪問支援)や、就労支援や中間的就労の場や居場所など、生きづらさを抱えた若者に寄り添う仕組みがもっと多様になればいいと思います。

私が委員を務めている労働政策審議会でも、ようやく若者就労の根拠法の検討が始まりました。
今や、一部の恵まれた人しか人間らしく働くことができない時代。中央ろうきんが一歩を踏み出した若者支援は、次世代の労働者の福祉を充実させる、意義のある取り組みだと思います。

「ビッグイシュー日本版」第249号(2014年10月15日発売)より転載