結婚後の家計管理は
「共有財布型」がオススメ

2019年の厚生労働省の人口動態統計によると、女性の平均初婚年齢は29.6歳ですので、30代で「結婚」するという女性も多くいらっしゃることでしょう。独身時代はお金をどう使うかは自分の裁量だけで決めることができますが、結婚すると自分だけでなく、家族全体のライフプランも考えながら家計管理をする必要が出てきます。

最近は、結婚しても夫婦ともに共働きというパターンが増えてきているので、共働きの家計管理で「お金が貯まらないパターン」と「お金が貯まるパターン」についてお話します。

共働きで一番多い
夫婦それぞれの財布で家計を管理する
「それぞれの財布型」

共働きで一番多い共働きで一番多い

この方法は夫婦共通のお財布はつくらずに、住宅ローンと食費は夫、通信費と水道光熱費は妻といった具合に予め分担する項目を決め、各自が負担し、貯蓄も各自で行います。この方法だとお互いに自由になるお金が多く、お小遣いという面からは不満がたまりにくいですが、一方で相手の支出について無関心になりがちになり、一緒に家計を管理するという意識が希薄になります。そのため、収入が多い割に無駄な出費が多く、実は貯蓄も思ったほどできていないというのは、「それぞれの財布型」に見られる傾向です。

共働きで
お金が貯まりやすい

夫婦の収入を全額共通のお財布に入れ、そこから固定費や生活費を支払う
「共通財布型」

共働きでお金が貯まりやすい共働きでお金が貯まりやすい

この方法は貯蓄やお小遣いもすべて共通財布から割り振ります。毎月のお金の流れも貯蓄も「見える化」されているので無駄なくお金がたまりやすい傾向にあります。また、家計が一元化されているので家計管理も簡単です。ただし、一方に家計管理を任せきりになったり、自由に使えるお金が少なかったりするので、不満を感じやすいというデメリットも。貯蓄の状況を定期的に確認することができるのであれば、自由度を増やすために、固定費や生活費だけを共通財布に入れて、お小遣いと貯蓄は各自で管理するという方法もあります。

生活のゆとりということでいえば、固定費・生活費を入れる「生活費口座」の他に「余暇・予備口座」も準備しておきましょう。趣味やレジャー費などの余暇費用、冠婚葬祭など一時的に支出するものに備えた予備費を予算化して貯めておきます。また、一時的な出費がある月は余暇に使うお金を抑えて調整することが必要です。そして食費や水道光熱費などは毎月金額が変動するので、予算よりも余った場合には、余暇・予備口座に入れておきましょう。反対に予算オーバーになった場合には、余暇・予備口座から補填するとよいでしょう。

今後のライフイベントに
かかるお金を把握しておこう

30代は結婚や子どもの誕生、住宅購入など、ライフイベントに変化のある時期です。さまざまなライフイベントが起こり、20代の頃よりも生活にかかる費用が格段に増えます。そこで、まず、夫婦でライフイベントにどれくらいの金額がかかるかを共有しておくことが大切です。中でも特にお金がかかるのが「住宅資金」「教育資金」「老後資金」の3大資金といわれているもの。これらの資金はどれも数千万円単位でかかる費用なので、それぞれについて事前に計画を立ててお金を貯めていくことが大切です。それぞれのライフイベントにかかる資金について見ていきましょう。

  • 結婚にかかる資金

    結婚費用全国平均461.8万円挙式、披露宴354.9万円ハネムーン費用71.8万円など出典:ゼクシィ結婚トレンド調査2019調べ結婚費用全国平均461.8万円挙式、披露宴354.9万円ハネムーン費用71.8万円など出典:ゼクシィ結婚トレンド調査2019調べ

    出典:ゼクシィ結婚トレンド調査2019調べ

  • 出産にかかる資金

    出産費用平均50.6万円出典:「正常分娩分の平均的な出産費用について」(平成28年度)(国民健康保険中央会)出産費用平均50.6万円出典:「正常分娩分の平均的な出産費用について」(平成28年度)(国民健康保険中央会)

    出典:「正常分娩分の平均的な出産費用について」(平成28年度)(国民健康保険中央会)

  • 住宅にかかる資金

    マイホームの購入価格全国平均土地付き注文住宅4,257万円建売住宅3,494万円マンション4,521万円出典:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査報告」(2019)マイホームの購入価格全国平均土地付き注文住宅4,257万円建売住宅3,494万円マンション4,521万円出典:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査報告」(2019)

    出典:住宅金融支援機構「フラット35利用者調査報告」(2019)

  • 教育にかかる資金

    幼稚園から大学まで全て公立の場合子ども1人につき約1,000万円幼稚園から大学まで全て私立の場合子ども1人につき約2,500万円通う学校によって学費に1,000万円以上の差出典:文部科学省「平成30年度子供の学費調査」などを基に独自に算出幼稚園から大学まで全て公立の場合子ども1人につき約1,000万円幼稚園から大学まで全て私立の場合子ども1人につき約2,500万円通う学校によって学費に1,000万円以上の差出典:文部科学省「平成30年度子供の学費調査」などを基に独自に算出

    出典:文部科学省「平成30年度子供の学費調査」などを基に独自に算出

  • 老後にかかる資金

    現在すでにリタイア生活を送っている人の平均的な生活費夫婦の場合27.1万円もらえる公的年金の平均額などと相殺すると約3.3万円の“赤字”65歳で定年退職を迎え、90歳まで生きると仮定した場合に貯めておきたい資金夫婦の場合2,100万円65~90歳:3.3万円×12ヶ月×26年=1,029万円もしものお金:500万円×2人分=1,000万円出典:総務省「家計調査報告」(2019年)を基に独自に作成現在すでにリタイア生活を送っている人の平均的な生活費夫婦の場合27.1万円もらえる公的年金の平均額などと相殺すると約3.3万円の“赤字”65歳で定年退職を迎え、90歳まで生きると仮定した場合に貯めておきたい資金夫婦の場合2,100万円65~90歳:3.3万円×12ヶ月×26年=1,029万円もしものお金:500万円×2人分=1,000万円出典:総務省「家計調査報告」(2019年)を基に独自に作成

目的別にお金を整理する

ライフイベントごとにどれくらいの費用がかかるのかがわかったら、目的別にお金を整理しましょう。

お金を目的別に整理するには、お金を「日々出入りするお金」「5年以内に使い道が決まっているお金」「10年以上先の将来のためのお金」に分け、それぞれ別の口座や金融商品、方法で貯めるという仕組みをつくりましょう。

  • 日々出入りするお金

    日常生活費や病気・怪我など、もしもの時のために備えておく、いつでも出し入れ可能なお金。お給料の6か月分~1年分が目安です。日々出入りするお金は出し入れしやすい普通預金口座に預けておくとよいでしょう。

  • 使い道が決まっているお金

    5年以内に予定がある結婚式費用、住宅取得の頭金など。
    5年以内に使い道が決まっているお金は使うまでに時間はありますが、使う時に元本が割れていると困りますから、普通預金よりも少し利回りがよく 安全性が高い定期預金や国債などへ振り分けるとよいでしょう。

  • 10年以上先の将来のためのお金

    将来のためのお金は、使うまでに時間の余裕があるので、元本が割れる可能性はあるけれど、大きく増える可能性がある株式や投資信託などに振り分けるとよいでしょう。

このように目的別にお金を整理することで、線引きが曖昧になってずるずると使ってしまうことを防止できるだけでなく、それぞれの目的達成への貯蓄ペースの管理もしやすくなります。

これまで多くの夫婦の家計相談にのってきましたが、将来のビジョンを共有していたり、家計の状況を共有していたりする夫婦は円満なケースが多いように思います。家計の状況や収支の問題点を把握したり、貯蓄へ向けた互いの意識をひとつにしたりするための、定期的な話し合いの機会を設けるとよいですね。

プロフィール

高山 一恵

(株)Money&You取締役/
ファイナンシャルプランナー

高山 一恵 (たかやま・かずえ)

CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー1級
慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株) エフピーウーマンを設立し、10年間取締役を務めた後、2015年より現職へ。女性向けサービス、一生涯の「お金の相談パートナー」が見つかる場『FP Cafe』の事業に注力。全国で講演活動・執筆活動、相談業務を行い、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。