増加する美容医療のトラブル! 契約時に注意したいポイントは? 支払い方法も徹底解説!
新型コロナウイルス(以下、コロナ)とは切っても切れない関係にあるマスク着用。人前でマスクを外さない、人に会う機会が減ったといった背景から、この期間を利用して美容医療に踏み切る人も増えています。それに伴い、美容医療の契約時にトラブルが増加しているとの報道も。契約後に後悔しないために気をつけたい3つのポイントについて、FPサテライト株式会社代表の町田萌さんにうかがいました。
コロナ禍で増加する美容医療
長引くコロナ禍でマスク生活が続くとともに、人と会う機会が減少した昨今。「人に顔を見せないから」「ダウンタイムを気にしなくて済むから」などの理由で、美容医療に興味を持ち、施術を受ける人も少なくないのではないでしょうか。
国内最大級のコスメ・美容の総合サイト「@cosme(アットコスメ)」が2022年1月に実施した「美容医療・整形に関するアンケート」によると、美容医療(医療脱毛、美容内科・美容皮膚科、美容外科、審美歯科・矯正歯科)への関心が、コロナ禍前に比べて「とてもあがった/ややあがった」と回答した方が3割強となっています。
また、これまでに約半数が実際に美容医療の経験があると回答。人と会う機会が減り、見た目に気を配る場面が減ったにもかかわらず、もっとも高い割合を占めたのは医療脱毛(28.3%)でした。
コロナ禍でより一層美容医療が身近になっている一方で、国民生活センターに寄せられる美容医療サービスのトラブルに関わる相談件数は2018年度の1,980件、2019年度の2,036件、2020年度の2,208件と増え続けています。
高額だから慎重に判断したい
具体的な相談内容は、国民生活センターの資料によると「施術不良」や「説明不足」以外では「高価格・料金」「返金」「解約」と費用に関するものが目立ちます。特に20代の相談内容では1位が「解約」、2位に「高価格・料金」、3位に「返金」と上位3つがすべて費用に関するものとなっています。
美容医療と一口に言ってもさまざまな分野があります。自由診療であることからクリニックによって金額は異なり、高額になるケースも見受けられます。例えば、全身の医療脱毛を行う場合の相場は25万円前後ですので、なかなか高額だと感じる人も多いでしょう。だからこそ後悔することのないよう、慎重に契約する必要があります。
美容医療契約における注意点
まず、カウンセリングでは、契約条件と金銭面、解約内容について十分に理解することが重要です。書面等で契約内容を確認し、疑問点や不明点があればその場で解決しておく必要があります。
「早くサービスを受けてきれいになりたい」という思いが先行すると、支払いや解約の話を軽視しがちですが、それらの確認を怠ると、高ぶった気持ちが収まってから後悔することもあります。
おすすめなのは、複数のクリニックを比較・検討すること、その場で契約はせずに帰宅して落ち着いてから最終決定することです。
ただ、カウンセリング当日に契約すると特典をつけるクリニックもあります。契約の意思があれば、特典のために契約したくなるかもしれません。もし、後になって契約に関して納得のいかないことが出てきたら、クーリングオフや中途解約などの方法もあります。
クーリングオフと中途解約
2017年12月1日以降に成立した契約であれば、一部の美容医療も特定商取引法に則(のっと)ってクーリングオフや中途解約ができるようになりました。適用条件は以下の通りです。
・サービス提供期間が1カ月を超えること
・サービスの総額が5万円を超えること(5万1円以上)
《クーリングオフ》
上記の条件を満たす契約について、契約書面を受け取った日を含めて8日間であれば、書面または電磁的記録で通知することにより、無条件で契約の撤回、解除が可能です。詳しい手続きについては、国民生活センターのHP等で確認できます。
《中途解約》
特定商取引法が適用される条件を満たした契約であり、契約期間内であれば無条件で中途解約ができます。
特定商取引法が適用される条件を満たしていない場合は、原則として事業者が定める解約の特約に則り、事業者が決めたキャンセル料や違約金などを支払うことになります。
美容医療を中途解約する場合、以下の解約手数料がかかります。
サービス提供前:2万円
サービス提供後:下記のうちいずれか低いほう
A.すでに提供されたサービスにかかる料金+5万円
B.未提供のサービスにかかる料金の20%に相当する額
すでに支払った金額が上記の金額を上回る場合は返金してもらうことができますが、不足がある場合は追加で支払う必要があります。
契約時に必要であるとすすめられて購入した化粧品やその他のアイテムなども購入契約を解除できますが、使ってしまった場合は、使った分の費用を負担しなければなりません。
中途解約には具体的な手順が定められていないため、事業者に「特定商取引法に則って中途解約をしたい」旨を伝えることで解約手続きを行います。
多くのサロンやクリニックで返金制度がありますが、違約金や解約金がかかることがほとんどです。そのため中途解約に関するトラブルも増えています。
たとえば国民生活センターに掲載されている事例でも、「初回施術後に中途解約をしたら10万円請求された」といったもののほか、「中途解約したら有償部分は1回のみと返金を断られた」「中途解約ができる期間は1年だった」など返金に応じてもらえないパターンもあります。
トラブルにならないためにも、契約前に契約内容をよく確認することが大切です。また、事業者の対応や条件に納得がいかないときは、すぐに最寄りの消費生活センターに相談しましょう。
ローン契約時の注意事項
美容医療の支払い方法はクリニックによって異なりますが、主にローン/クレジットカード/現金の3種類です。ローンとクレジットカードについて見てみましょう。
《ローン》
美容医療で利用できるローンには、クリニック提携の信販会社の医療ローン/銀行等が提供する医療ローン/カードローン等があります。
ローンを利用する際は低金利のものを優先して検討しつつ、それぞれのメリット・デメリットも勘案して判断するのがよいでしょう。ただし、上記の表はあくまで一般的な傾向であり、金利や条件はクリニックや金融機関によって異なります。ローンを検討する際はそれぞれの比較も大事です。
《クレジットカード》
クレジットカードによる支払い方法は一括払い、ボーナス払い、分割払い、リボ払いがあります。
クレジットカードはキャッシュレス・ポイントがつくといったメリットがある一方、3回以上の分割払いやリボ払い、キャッシングを利用した場合は利息(手数料)が発生します。一般的にクレジットカードの金利は高いため(年利約15~18%)、資金が足りないときには金利の低いローンから検討することをおすすめします。
最後に
美容医療の施術を受ける方の多くは「きれいになりたい」という前向きな気持ちを抱えていると思います。それはポジティブな思いで、とても素敵なことです。
そんなワクワク感が先行するのは悪いことではありませんが、契約後のトラブル事例を事前に知ることや、ローンを組んでまで行う必要があるのか立ち止まって考えることも必要です。考えた結果、自分には必要だと思った場合は、金利などの条件を比較することが大切です。また、万が一契約後に困った場合は、消費者ホットライン(局番なし188)等の相談先があることを覚えておきましょう。条件面や支払いについては冷静に確認して、安心して気持ちよく施術を受けてほしいと願っています。
※このコラムは、2022年6月現在の情報を基に作成しています。