いまさら聞けない!?「NISA」と「iDeCo」って結局なんですか?
ここ数年、個人が中長期的かつ効率的に資産形成できる制度として注目されている「NISA(ニーサ)」と「iDeCo(イデコ)」。特にNISAは、2024年から制度が新しくなって話題になりました。とはいえ、「制度の違いがわからない」「何から始めたらいいのかわからない」といった声は少なくありません。そこで今回は「NISA」と「iDeCo」の違いを簡単におさらいし、それぞれのおすすめポイントをお伝えします。
NISAとiDeCo、加入状況は?
NISAとiDeCoは、どちらも投資を行いながら税制優遇を受けることのできる制度です。年々加入者が増加している2つの制度ですが、現在の加入状況はどのようになっているのでしょうか。それぞれの加入状況を見てみましょう。
NISAは2014年に制度が始まり、2024年には制度が大幅に拡充されました。金融庁によると、国内のNISA口座数は約2,323万口座(2024年3月末時点)となっており、2024年の買付額はすでに6兆円を超えています。制度開始以降、幅広い層に利用されており、特に20~40代の口座数の増加は顕著となっています。
一方、iDeCoは2001年に始まり、2016年の改正確定拠出年金法成立を経て、2017年1月から加入対象者が大幅に拡大しました。国民年金基金連合会によると、iDeCoの加入者数は、2016年3月末時点では約26万人でしたが、2024年3月末時点では320万人を超えており、法成立後の加入者は約12倍に増えています。
また、iDeCoは女性の加入者割合が大きく増加しているのも特徴です。2016年3月末と2022年3月末で男女の加入者数を比較すると、男性の増加率が約7.6倍なのに対して、女性の増加率は約13.4倍となっています。
このような加入状況から、NISAとiDeCoが個人の資産形成の手段として浸透してきていることがわかります。
NISAとは
NISAは、投資で得られた利益にかかる税金が非課税になる制度です。2024年に制度改正されてからは、「新NISA」とも呼ばれています。
新NISAのポイント
① 無期限で非課税投資が可能に
新NISAになってから、生涯にわたって非課税の投資ができるようになりました。税金がかからない分、お金を効率よく増やすことができ、期限を気にすることなく安定的な資産形成を行えます。
② 年間の非課税投資枠が拡大
新NISAでは、年間で投資できる金額が大幅に増加しました。「つみたて投資枠」では年間 120万円まで、「成長投資枠」では年間 240万円まで非課税で運用できます。つみたて投資枠と成長投資枠は併用できるため、年間で最大360万円まで非課税で運用が可能です。
③ 1人あたりの生涯投資枠は1,800万円まで
生涯にわたり非課税で投資できる限度額は、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の合計で1,800万円までです。「つみたて投資枠」だけで1,800万円投資することもできます。「成長投資枠」だけ利用する場合は1,200万円が上限ですので、生涯投資枠を使い切りたい場合は、残りの600万円を「つみたて投資枠」で投資する必要があります。
④ 安定して資産形成ができる商品が多い
新NISAの「つみたて投資枠」は、中長期的な積み立て向けの投資枠です。金融庁が定める一定の基準を満たした投資信託と上場投資信託(ETF)に投資でき、「長期・積立・分散」に適した商品が揃っています。
なお、「成長投資枠」は、これらを含めた幅広い投資信託、上場株式、不動産投資信託(REIT)にも投資が可能で、一括での投資もできます。
⑤ 資産を売却した翌年に非課税投資枠が復活
新NISAでは、保有していた資産を売却して非課税投資枠(生涯投資枠)に空きが出た場合、その空きを再利用して、翌年以降に改めて非課税で投資することができます。また、新NISAの資産はいつでも引き出すことができるので、住宅購入資金・教育資金など、さまざまな用途に柔軟に対応できます。
新NISAの注意点
新NISAでは、複数の口座の利益と損失を合算した金額で税額を抑える「損益通算」や、その年の所得から損失を控除できなかった場合、翌年以降3年以内にその損失を繰り越して控除する「繰越控除」が利用できません。
iDeCoとは
iDeCoは、毎月自分で拠出した掛け金を定期預金や投資信託で運用し、その成果を60歳以降に受け取る制度です。国の公的年金には国民年金と厚生年金の2つがありますが、それだけでは老後のお金は十分ではないのが現実。iDeCoを活用すれば、公的年金の上乗せとなる「自分年金」を効率よく作ることができます。
iDeCoのポイント
iDeCoの最大のメリットは、掛け金を拠出するとき・運用中・受け取るときの3つのタイミングで税制優遇が受けられることです。
① 拠出するとき
iDeCoの掛け金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。たとえば、下表の前提を満たした年収600万円の会社員が、毎月2万円の掛け金を拠出すると、年間の掛け金の合計額(24万円)全額を所得控除できます。これにより、年間の所得税が約2万4,500円、住民税が約2万4,000円、合計約4万8,500円を軽減できます。
② 運用中
運用で得られた利益にかかる税金(20.315%)が非課税になります。
③ 受け取るとき
iDeCoは、一時金で受け取ることも年金形式で受け取ることもできます。一時金で受け取った場合は「退職所得控除」、年金形式で受け取った場合は「公的年金等控除」が適用になります。
iDeCoの注意点
iDeCoで積み立てた資産は原則60歳まで引き出せません。また、iDeCoの口座開設には2,829円の口座開設手数料がかかり、毎月171円の口座維持手数料も必ずかかります。金融機関によっては月数百円程度の運営管理手数料もかかります。
NISAとiDeCo、おすすめの活用方法は?
NISAもiDeCoも税制優遇の恩恵を受けながら、安定して中長期的にお金を増やすことができる制度ですが、どのように活用したらよいでしょうか。それぞれを比較した上で、おすすめのポイントを紹介します。
新NISAのおすすめポイント
投資が初めての場合は、新NISAの「つみたて投資枠」から始めてみるとよいでしょう。「つみたて投資枠」には金融庁の定める基準を満たした商品がラインアップされており、投資の基本となる長期・積立・分散投資を気軽に行うことができます。
また、「投資を続けながらいつでも引き出すことができる」NISAの特徴が、非課税期間の恒久化によりさらに活用しやすくなっています。運用商品の見直しを行ったり、一時的に引き出したりした場合でも、改めて非課税枠を使用することができるので、ライフイベントに対応しながら資産形成していくことができます。
投資に慣れてきたら、もっと高いリターンを狙って「成長投資枠」にチャレンジすることも可能です。 「つみたて投資枠」と併用することもできますので、基本は「つみたて投資枠」でコツコツためて長期的な資産形成をしつつ、高配当株ファンドなどで、配当を受けとり、おいしいものを食べたり、買い物をしたりという「楽しみ」のために、「成長投資枠」を利用するという使い方もできるでしょう。
iDeCoのおすすめポイント
iDeCoでは掛け金を全額所得控除でき、所得税・住民税が軽減されます。所得が多く、税率の高い人ほど、iDeCoの所得控除の効果は大きくなります。60歳まで引き出せないことをiDeCoのメリットととらえると、老後資金を貯めたい方には特におすすめです。
また、iDeCoの活用は子育て世代にとってうれしい効果もあります。
たとえば、保育料の負担を軽減できるケースです。基本的に0〜2歳は支払いが必要な保育料ですが(幼児教育・保育の無償化は通常3歳から)、保育料の金額は夫婦が納める住民税(市区町村民税)の「所得割」の年間合計額に基づき計算されます。
所得割とは、住民税のうち所得に応じて納める額が決まる部分で、「都道府県民税」と「市区町村民税(東京都区部は特別区民税)」とがあり、保育料算出の元になるのは「市区町村民税」です。そして市区町村によっては、この所得割額に応じた保育料の階層区分を設けています。
前述のようにiDeCoの掛け金は全額が所得控除されます。所得控除により「課税所得」が減ることで、住民税の所得割額も下がり、保育料の階層が下がる可能性があるというわけです。ただし、住民税は前年の所得に基づいて計算されます。保育料算出の仕組みを考えると、iDeCoは早め早めにスタートしておきたいところです。
ほかにも、iDeCoは、国公私立を問わず、高校などの授業料の補助が受けられる国の「高等学校等就学支援金制度」にも影響するケースがあります。この制度の受給対象者は、保護者の世帯年収910万円未満が目安(※)となっており、判定基準となるのは課税所得です。年収1,000万円以上の世帯でも、iDeCoを活用して掛け金を全額控除することで、無償化の対象となるケースがあるのです。
(※)世帯構成などによる例外あり
まとめ
NISA、iDeCoを始めたいという場合は、金融機関でNISAやiDeCoの口座を開設する必要があります。投資初心者の方は、制度の内容がきちんと理解できていなかったり、口座の開設手順でつまずいてしまったりすることもあるでしょう。そんなときの対策として、職員の方に相談しながら口座開設できる金融機関を選ぶのも一つの方法です。
また、NISAやiDeCoを活用して資産を増やしていくことは大切ですが、投資信託などの投資商品は運用がうまくいかなければ、元本割れする可能性もあります。最低でも生活費6カ月分の預貯金は確保しておく必要があります。まずは、自分のライフプランに合わせて、無理のない範囲でスタートしてみましょう。