知って納得! 家族で考える奨学金との向き合い方
近年、奨学金を利用する学生が増えており、多くの学生の進学を支える制度として欠かせない存在となっています。一方で、物価や金利上昇の影響により、奨学金の返済負担が大きくなりつつあるのも実情です。将来の生活に負担を残さないようにするには、奨学金の仕組みを正しく理解したうえで、利用することが大切です。今回は、奨学金を利用する際に知っておきたい基本的な知識から、返済の進め方、返済が難しくなった場合の支援策まで、奨学金との上手な付き合い方についてお伝えします。
大学進学に必要な資金は?
人生の3大資金のひとつとされる教育資金の中でも、特に負担が大きいのが大学などの進学費用です。「国公立・私立」「文系・理系」といった進路によって金額に差はありますが、たとえば私立理系では学費総額が500万円を超えることも珍しくありません。さらに、下宿を伴う進学の場合は、4年間の生活費だけでも数百万円規模の負担になることもあります。
こうした状況に加え、物価上昇による家計負担の増加や、実質賃金の伸び悩みなども影響し、教育資金を“収入と貯蓄だけで賄う”方法では対応しきれないケースも増えています。
そこで頼りになるのが、「奨学金」や「教育ローン」の活用です。
奨学金には、「給付型」と「貸与型」があり、貸与型は主に学生本人が借り入れる仕組みです。日本学生支援機構のほか、自治体、企業、大学独自の制度も存在します。一方、教育ローンは主に保護者による借入れとなり、日本政策金融公庫が提供している国の教育ローンのほか、民間の金融機関が提供する教育ローンもあります。
大学生の2人に1人が利用 ― “奨学金時代”の現状
日本学生支援機構の調査によれば、奨学金の利用率は年々増加しています。特に、大学学部生(昼間部)では、平成8年度に約21.2%だった利用率が、令和4年度には約55.0%まで上昇しました。いまや奨学金は、多くの家庭にとって教育資金を準備するうえで欠かせない手段のひとつとなっています。
一方で、奨学金の利用は、卒業後の家計に長く影響する点にも目を向けておきたいところです。奨学金を利用した大学学部生の平均貸与総額は330万円、平均返還年数は15年とされており(※)、仮に23歳から返済を始めた場合、完済は38歳。社会人として働き始め、結婚や出産、住宅購入といったライフイベントを迎える時期と、奨学金の返済期間が重なることになります。
(※)出典:日本学生支援機構(令和7年10月 奨学金事業に関するデータ集)
奨学金の種類や特徴
奨学金を利用するにあたっては、まず制度の仕組みや内容をしっかり理解することが大切です。
■ 給付型奨学金
給付型奨学金は返済不要で、特に家計が困窮している家庭の学生を対象としています。家計基準や学力基準が厳しく設定されており、誰でも受けられるわけではありません。また、多子世帯など特定の条件を満たす場合に支給されることもあります。
■ 貸与型奨学金
貸与型奨学金は、返済が必要な奨学金であり、以下の2種類に分けられます。
● 第一種奨学金(無利子)
金利はかかりません。家計基準や学力基準が厳しく設定されているなど審査は厳しめですが、返済負担が少なくて済みます。
● 第二種奨学金(有利子)
金利がかかりますが、審査基準は緩やかで、申し込みやすい特徴があります。利子がつくため返済総額は増えますが、多くの学生に利用されているタイプです。
なお、第二種奨学金は、利率固定方式(固定金利)と利率見直し方式(変動金利)の2種類があり、これらの金利は貸与終了時(多くの場合は卒業時)に決定します。また、返済開始は貸与終了の翌月から数えて7カ月目となります。
これまで、第二種奨学金は超低金利で推移していましたが、現在は金利が上昇傾向にあります。将来の金利上昇に伴って、貸与が始まる時点(入学時)の想定より返済総額が増える可能性がありますので、特に有利子の奨学金を利用する場合は、入念に返済計画を立てることが大切です。
■ 入学時特別増額貸与奨学金
入学月に一時金として奨学金を増額できる有利子の奨学金です。第一種または第二種奨学金を申し込んだ人だけが利用できますが、入学前には利用できません。将来返済する必要があるため、返済計画を立てる際には、第一種や第二種に加えて、この奨学金の返済額も確認しておくことが重要です。
なお、奨学金は複数の種類を組み合わせて利用することもできます。たとえば、無利子の「第一種奨学金」と、有利子の「第二種奨学金」を併用することができます。また、日本学生支援機構以外にも、自治体や大学、企業が提供する独自の奨学金があり、これらを併用することで在学中の学費の負担を軽減することもできます。
学生・保護者──立場ごとに考える奨学金との向き合い方
奨学金は、申し込む立場によって、意識すべきポイントが変わります。ここでは「学生」「保護者」という2つの視点から、奨学金との向き合い方を整理します。
■ 学生
奨学金には、高校在学中に手続きをする「予約採用」のほか、入学後に進学先の学校で申請する「在学採用」があります。
奨学金は、学生本人が将来の収入で返済する借金であるため、返済計画をしっかり立てることが大切です。しかし、高校生や大学入学直後の段階では、借入れが将来どの程度の負担になるのかを理解している学生は少ないのが現実といえるでしょう。
そのため、奨学金を申し込む際には、日本学生支援機構の「奨学金貸与・返還シミュレーション」を使って、いくら借りることができ、どれくらいの返済額になるのかを事前に確認することをおすすめします。シミュレーションを行うことで、返済開始時期や金利の影響も明確になり、計画的に返済に備えることができます。
■ 保護者
奨学金は学生本人の借入れですが、進学の判断や借入額の検討には保護者の役割が欠かせません。保護者が一緒にシミュレーションし、子どもの奨学金を「世帯の教育資金計画」の一部として把握しましょう。子ども任せにせず、将来の返済負担を見越して、必要に応じて教育ローンなどを併用するのも選択肢といえます。
返済が難しくなったときの対処法
奨学金は、卒業後に返済し続けることが大原則です。返済が滞ると、延滞金が発生し督促の連絡が届いたり、返済が3カ月以上遅れると信用情報機関に登録されて新たな借入れやクレジットカードの取得が難しくなったりすることもあります。さらにその後も延滞が続けば、訴訟や財産の差し押さえといった事態も考えられます。
とはいえ、生活の中では、長期入院や失業など予期しない事態が起こることもあります。希望通りに就職できず、返済が難しくなることもあるでしょう。ここからは、万が一返済が難しくなった場合の、さまざまな支援策をご紹介します。
■ 日本学生支援機構
日本学生支援機構には、1回あたりの返済額が減らせる「減額返還制度」や、一定期間返済を猶予してもらえる「返還期限猶予制度」があります。
■ 金融機関・企業・自治体
金融機関や企業、自治体も奨学金の返済支援に取り組んでいます。
● 金融機関の「奨学金借換えローン」
奨学金の借入状況にもよりますが、借入先を変えることによって金利が下がったり、返済期間を延長することで、月々の返済負担を軽減できたりするケースもあります。ただし、借換えに手数料などの費用が発生する場合もありますので、まずは金融機関に相談してみるとよいでしょう。
● 企業の「奨学金返還支援制度」
企業が、従業員の奨学金返済残額の一部または全額を肩代わりする制度です。日本学生支援機構によると福利厚生の一環として2024年10月末時点で全国で2,587社がこの制度を利用しています。
● 地方自治体の返済支援
特定の業種に就職して定住することで、奨学金の返済を助成する地方自治体の支援制度もあります。UターンやIターン就職を考えている方にとっては、有力な選択肢となるでしょう。
「借りる前に知る」「返す前に備える」が安心に
奨学金は、将来の学びの機会を広げる大切な制度です。しかし、安易な借入れは将来の生活に負担を残すことになりかねません。まずは子どもと保護者が、借入額や返済計画に無理がないかを一緒に確認することから始めましょう。
返済が始まった後も、困ったことがあれば早めに借入先や金融機関などに相談することが重要です。ポイントは、困る前に知り、備え、行動すること。こうした心構えを持つことで、奨学金を安心して活用しながら、将来の生活にもゆとりを持たせることができます。
※このコラムは、2025年12月現在の情報を基に作成しています。





