NISAの始め方は?
口座開設方法|金融機関の選び方や
注意点を解説
2024年1月に新しいNISA(ニーサ)制度が開始となり、これまでよりも非課税期間や非課税枠が拡充されたことを機に、NISAを始めようと思っている方も多いと思います。しかし、「そもそもNISAって何?」「どうやってNISAを始めれば良いの?」と疑問に思っている方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、2024年に生まれ変わったNISAの概要や知っておくべき注意点、NISAの始め方などを解説します。
1. NISAとは?
NISA(ニーサ)とは、国の制度である「少額投資非課税制度」のことです。NISA口座を通じて上場株式や投資信託などの金融商品に投資すると、これらを売却して得た利益や受け取った配当金が非課税となります。
NISAを始めるには、金融機関で専用口座を開設する必要があります。口座開設に費用は必要ありませんが、すべての金融機関を通して1人1口座しか開設できません。ただし、年単位で金融機関の変更は可能です。
2023年までのNISAは「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類のうち、いずれか一方しか利用ができませんでしたが、2024年からは区分がなくなって一本化し、「成長投資枠」「つみたて投資枠」という名称に変わるとともに、併用が可能となりました。
成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
---|---|---|
年間の投資枠 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 |
非課税保有限度額 | 1,800万円(成長投資枠とつみたて投資枠の合計) ※うち成長投資枠の上限は1,200万円まで |
|
口座開設期間 | 恒久 | 恒久 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
出典:金融庁|NISAを知る
2023年末までに旧NISA口座を開設していた方であれば、新たな開設や移換の手続きは必要なく、自動的に新しいNISA口座が同じ金融機関で開設されます。
1.1. つみたて投資枠・成長投資枠とは
新しいNISAは以下の2つの投資枠で構成されています。
- つみたて投資枠(旧つみたてNISA)
- 成長投資枠(旧一般NISA)
つみたて投資枠は、長期にわたる資産形成を目的にした枠であり、投資できる商品は、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定されます。一方、成長投資枠は投資対象がつみたて投資枠よりも多く、つみたて投資枠の対象商品に加えて上場株式なども対象となります。
1.2. NISAとiDeCoの違い
NISAと同様に、税制優遇を受けながら資産形成が可能な制度として、iDeCoがあります。
iDeCo(イデコ)とは「個人型確定拠出年金」のことです。
2024年から始まった新NISAでは、投資して得た利益(運用益)が無期限で非課税になりますが、iDeCoでは以下のような税制メリットが得られる点が特徴です。
- 掛金の拠出額の全額が所得控除となる
- 運用期間中は運用益が全額非課税となる
- 受取時は一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除が受けられる
拠出・運用・受け取りのそれぞれで税制メリットがある点がiDeCoの特徴で、所得税や住民税負担を抑えながら老後に向けた資産運用ができます。
ただし、iDeCoは私的年金制度の一種であるため、いつでも運用商品を売却できるNISAとは違い、原則60歳までは掛金を引き出すことはできません。
NISAとiDeCoは別の制度であるため、両方の口座を開設して運用することも可能です。運用途中で引き出す可能性があるお金はNISA、老後資金として60歳まで引き出さなくても問題ないお金はiDeCoなど、お金の用途に応じて使いわけることで両方のメリットが得られます。
また、NISAとiDeCoでは商品ラインアップに違いがあります。NISAのつみたて投資枠は金融庁の基準を満たす投資信託、成長投資枠は上場株式や投資信託などが対象です。一方のiDeCoは金融機関ごとに商品ラインアップが異なり、元本確保型の定期預金や保険の低リスク商品と投資信託から、リスク許容度に応じて投資する商品を選ぶことになります。NISAのつみたて投資枠とiDeCoの違いは以下のとおりです。
NISA(つみたて投資枠) | iDeCo | |
---|---|---|
年間投資可能枠 | 120万円 | 14.4万円~81.6万円 ※年金の加入状況で異なる |
対象商品 | 金融庁の基準を満たす、長期・分散投資に適した投資信託 | 定期預金・保険・投資信託等 ※ラインアップは金融機関ごとに異なる |
税制優遇 | 運用益が非課税 |
・掛金が全額所得控除 ・運用益が非課税 ・将来の受取時に退職所得控除または公的年金等控除が受けられる |
対象年齢 | 18歳以上 | 年金の加入状況で異なる |
資産の引き出し | いつでも可能 | 原則60歳までは引き出し不可 |
2. NISAの制度に関して知っておくべきこと・注意点
NISAは、投資した資産が増加した際に生じる利益や配当が恒久的に非課税になる制度です。本来は税金として納める分まで再投資ができるため、効率的な資産運用が可能です。ただし、以下にご紹介するような注意点も知っておきましょう。
2.1. 元本保証はないことを把握しておく
NISAに限った話ではありませんが、株式や投資信託などの金融商品には元本保証はありません。株価や投資信託の基準価額が低下した場合、投資元本を下回る「元本割れ」を起こすことがあります。
投資初心者の方が元本割れに直面すると「これ以上損をしたくない」という心理から早期売却し、資産形成をうまく進められない可能性があります。そうした事態にならないためには、自身のリスク許容度に合う商品の選定が重要です。投資の経験が浅く商品選定に自信が持てない方は、事前に投資やNISA制度の勉強をし、自身のリスク許容度を決めることもよい方法です。自分で投資の勉強を進めることに不安がある場合は、金融機関への相談も有効です。
2.2. 非課税で投資できる金額には上限がある
NISAでは、非課税で投資できる金額の上限が設定されています。
(年間非課税投資枠)
- つみたて投資枠:120万円
- 成長投資枠:240万円
NISAにおいて非課税で保有できる限度額は1,800万円ですが、うち成長投資枠の上限は1,200万円までです。1,800万円すべてをつみたて投資枠で使い切ることも可能です。また、年間の非課税投資枠の範囲内であっても、非課税保有限度の総枠を超えての保有はできません。
また、年間の投資枠は翌年以降に繰り越せない点にも注意が必要です。早期に非課税投資枠の総枠を埋めたい場合は、年間の非課税投資枠の上限まで投資できるように計画を立てましょう。
なお、新NISAでは、NISA口座の保有資産を売却することで翌年以降に売却した分の非課税保有限度額を再利用できます。
2.3. 他の株式や投資信託をNISA口座には直接移せない
特定口座などNISA以外の口座で株式や投資信託をすでに保有している場合、それらの資産をNISAに直接移すことはできません。
特定口座などで運用している株式や投資信託などの資産をNISA口座に移して非課税の運用をしたい場合は、特定口座の株式や投資信託を一度売却し、NISA口座で購入し直す必要があります。NISA口座で投資し直すことで、売却時の利益に課税される場合がありますが、NISA口座に移すことで非課税のメリットを長期間受けられる可能性もあります。保有している資産の状況を踏まえて、検討するとよいでしょう。
2.4. 金融機関を変更する場合は手続きが必要になる
NISAは1つの金融機関でしか口座を保有することができませんが、金融機関の変更は可能です。NISA口座をどこで作成するべきか迷ったときは、とりあえずよく使う金融機関で開設手続きを行い、あとから必要に応じて金融機関の変更を検討することも可能です。
NISA口座の金融機関を変更したい場合は、変更前と変更後の金融機関でそれぞれ以下のような手続きが必要です。
- 変更前の金融機関:口座変更の希望を申し出る
- 変更後の金融機関:NISA口座開設の手続きをする
①利用中の金融機関にNISA口座変更の申し出を行うと、金融機関から「金融商品取引業者等変更届出書」が届くので、必要事項を記入して提出します。
②提出した「金融商品取引業者等変更届出書」が受理された後、利用中の金融機関から「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」が送付されます。
③受け取った「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」を新しい金融機関に提出し、NISA口座の開設手続きを進めます。
なお、金融機関の変更手続きの期限は「前年の10月1日から当年の9月末まで」です。
3. NISAの始め方
ここからは、初めてNISAで投資を始める方に向け、NISA口座の開設方法やNISAの始め方について解説します。
3.1. 金融機関にてNISA口座開設の申込み
NISAを始めるためには、金融機関でNISA口座を開設する必要があります。口座を開設する金融機関が決まったら、ホームページや窓口で口座開設の申込みをしましょう。口座開設時に必要な書類は金融機関ごとに異なりますが、〈中央ろうきん〉では以下の書類の提出が必要です。
- 本人確認書類(運転免許証、各種保険証、マイナンバーカード 等)
- 個人番号(マイナンバー)を確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード、マイナンバー記載の住民票の写し)
〈中央ろうきん〉ではWebでNISA口座の開設が可能です。
3.2. 税務署への申請および確認
NISA口座の開設を申し込むと、金融機関は税務署に対して口座開設のための申請をおこないます。税務署は申込者の情報を確認し、NISA口座開設の可否を判断します。
税務署で確認される審査の項目には以下のようなものがあります。
- 18歳以上であること
- 日本国内に住んでいること
- まだNISAの口座を持っていないこと
税務署の口座開設審査には、一般的に数週間かかります。
3.3. NISA口座開設完了の通知
税務署での審査が終わってNISA口座の開設が認められれば、金融機関からNISA口座開設完了の通知が届きます。なお、非承認になった場合も通知が届きます。
3.4. NISAでのお取引開始(投資する商品や金額の設定)
NISA口座の開設が無事に済んだら、どのような金融商品に投資するのかを決めます。投資する商品・購入額・購入タイミングなどを決定し、NISA口座での取引を開始します。
4. NISAを始める金融機関の選び方
NISA口座を開設できる金融機関は数多くありますが、NISAの取扱商品や受けられるサポートは金融機関ごとに異なります。NISAを始める場合は、ご自身の希望に合ったサービスを提供している金融機関を見つけることが大切です。
金融機関を選ぶ際にどのようなポイントを確認すれば良いかをお伝えします。
4.1. 商品(ファンド)を確認する
金融機関を選ぶ際は、取り扱っている商品ラインアップを確認しましょう。金融機関によって取り扱う商品の種類が異なるため、ご自身が興味のあるラインアップが揃っているかは要チェックです。
ご自身でさまざまな商品を比較・検討したい方にとっては、商品ラインアップが充実している金融機関がおすすめです。しかし、初めてNISA口座で投資する方など、数が多いと投資商品を決められない場合は、基本的なラインアップに絞ってある金融機関のほうが合う場合もあります。
〈中央ろうきん〉で取り扱っている投資信託(ファンド)は以下のリンクから探せます。NISA口座の開設に興味がある方は、ぜひ一度ろうきんのラインアップを確認してみてください。
4.2. お申込み手数料(取引手数料)を確認する
NISAのうち、つみたて投資枠の商品ラインアップに関しては、お申込み手数料(取引手数料・購入時手数料)は必要ありません。一方、成長投資枠で投資できる株式や投資信託などの場合は、一部手数料が発生するものもあります。お申込手数料は金融機関ごとに異なるため、NISA口座開設前に比較検討しておきましょう。コストをできる限り抑えた投資をしたい方は、各金融機関の成長投資枠の手数料を確認し、納得いく水準の金融機関に申込みましょう。
4.3. 独自サービスの内容を確認する
商品ラインアップやお申込手数料などを比較しても1社に絞り込むことが難しい場合、金融機関ごとの特典・サービスにも注目してみましょう。例えば、以下のようなものです。
- ATM利用手数料や振込手数料が無料
- 連携している企業のポイントの付与
- 他のサービス利用時の手数料の割引
- キャンペーンなどを行っている など
4.4. 買付資金の引き落とし方法を確認する
買付資金の引き落とし方法も、NISA口座を開設する金融機関を決める重要な要素です。給与受け取り口座からの引き落としができる金融機関を選ぶことをおすすめします。
買付資金は、自身の普通預金口座・証券総合口座・クレジットカードのいずれかから引き落とされることになります。自身の給与受け取り用の口座から引き落としができる金融機関なら口座開設の手間もなく、引き落とし日までに資金を移動させておく必要もありません。
5. まとめ
NISAは、口座内で投資した株式や投資信託の運用益全額が無期限で非課税になるため、将来を見据えた資産形成の手段として注目されています。NISA口座を開設するなら、4.「NISAを始める金融機関の選び方」であげたポイントを確認したうえで、金融機関を選ぶといいでしょう。
〈中央ろうきん〉ではWebでNISA口座の開設が可能です。
このコラムは、2024年6月時点の情報を基に作成しています。
監修者情報
高柳政道
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、DCプランナー2級保有
金融コラムニストとして資産運用・生命保険・相続・ローン商品・クレジットカードなど多岐にわたる執筆業務と監修業務に携わり、関わった記事案件は500を超える。企業に属さないFPとしても活動し、客観的な立場から投資・保険商品の選び方を中心に情報発信をおこなう。
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