2023年 選考結果
選考委員長による選後評
選考結果 2023助成の選考について
選考委員長
藤田 孝典
特定非営利活動法人ほっとプラス 理事
≪プロフィール≫
聖学院大学心理福祉学部客員准教授。四国学院大学客員教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員(2012年)。著書に『コロナ貧困』(毎日新聞出版2021)『棄民世代』(SB新書 2020)『中高年ひきこもり』(扶桑社2019)『貧困クライシス』(毎日新聞出版 2017)『下流老人』(朝日新聞出版 2015)『貧困世代』(講談社 2016)など。
小さな“光”を支え続けて大きな“光”となるように
僭越ながら本年度、選考委員長を務めました藤田孝典と申します。
私自身、学生時代にホームレス問題に気づき、学生仲間数名の小さなボランティア組織を立ち上げ、支援活動を始めました。それ以降、約20年、さいたま市を本拠地として、全国各地で地域に横たわる数々の社会問題に取り組んできました。
今では複数のNPO団体、市民団体を立ち上げ、ホームレスに限らず、母子世帯、外国人、ひきこもり状態にある方など、多様な生活困窮者支援活動に取り組んできました。その結果として、2015年には生活困窮者自立支援法という法律の策定にもかかわり、全国各地で組織的で広範な支援活動が公的に進められる情勢となっています。また、それらの経験を活かして、現在は後進となる学生や後輩たちを大学などで養成しています。
しかし、私たちの活動も元々は小さなボランティア組織であり、それを援助、支援してくださる人たちがいなければ、大きな活動、運動には発展しませんでした。活動開始当初は、数名から始めた小さなボランティア活動でも、地域の労働組合、弁護士、医師、篤志家など多くの支援者を得て活動を広げることができました。
本助成制度でも、今は小さな市民活動であっても、いずれは大きな地域の光となるだろう、と期待しつつ、選考作業を進めさせていただきました。最初は少額の助成でも、それを契機として活動が拡大し、さらなる支援や他の助成につながることはよくあることです。
本選考にご応募いただいた団体の皆さまには、常日頃からの地道で熱心な活動に改めて敬意を表します。日本では寄付文化が未熟であり、活動原資が常時不足する市民団体が多く、それゆえ市民活動は欧米各国ほど活発ではありません。そのようななか、非営利で公益性の高い必要不可欠な活動に尽力いただけることは仲間として嬉しい限りです。助成の当否にかかわらず、引き続き活動に邁進いただけるようお願いいたします。
ここからは若干、本選考に言及させていただきます。
まず1年目の選考では、予算規模の比較的小さな市民団体であり、今後の発展性、必要性を大いに期待できる団体を中心に助成しました。1年目助成はスタートアップを支える、という意味でも少額ではありますが、資金を有効活用し、2年目以降、さらなる飛躍を遂げてほしいと願っています。本助成の成果をもとにして、他の助成事業にもアプローチし、堅実な団体運営を心がけていただきたいです。
次に2年目の選考では、1年目助成を受けての実績、成果を加味し、さらなる活動の展開を期待する団体へ助成しました。市民活動は短期間で成果が出るような容易なものではありませんが、それでも広がりが見られる活動へ期待を込めています。また、1年目はスタートアップでしたが、2年目以降も助成を続けることに意義がある活動か否かも検討しました。地道な活動への敬意は表しつつ、発展性に疑義が生じる事業などは助成を見送らざるを得ない結果となっています。
最後に3年目の選考では、活動実績とともに更なる助成によって、活動が発展、定着していくことが期待できる事業へ助成しました。3年目助成になると、本助成制度による助成がなくても、すでに多くの支援者を得られ、活動が大いに発展、定着している団体がいくつも見受けられました。自立した市民活動が可能な団体も多く見られ、1年目、2年目助成の選考の視点に間違いはなかったことを確信しました。それゆえに相対的に予算規模が大きな団体への助成は見送る結果となっています。3年目選考で助成を受けた団体は、市民活動の更なる発展と定着、自立性へ期待しております。
本助成制度は小さなものではありますが、今後も小さな“光”を応援し、大きな希望の“光”となるように共に尽力していきたいと思います。改めて市民活動に取り組む同志の仲間たちに敬意を表し、締め括りとさせていただきます。