2024年 選考結果
選考委員長による選後評
2024年度助成の選考について
選考委員長
手塚 明美
一般社団法人 ソーシャルコーディネートかながわ 代表理事
≪プロフィール≫
地域活動と社会教育活動の経験を生かし、NPOの支援を通じたまちづくり団体を設立。その後、県内各地のNPO支援者と共に広域かつ多様なセクターとの連携を目指した組織を創設し現在に至る。
NPO支援の在り方を柱に、情報収集と発信を進め、非営利組織のあり方や組織の自己診断および社会的な評価に取り組んでいる。
生きるたのしみ、働くよろこび
2003年に開始した〈中央ろうきん〉の助成制度は、2020年度まで社会貢献基金として「活動開始資金」から「活動展開資金」まで、同一団体に4年間のサポートを実施していました。「働く人を取り巻く社会の課題解決にチャレンジする人を応援する」というコンセプトは、目を引くものがあり、大変興味をもち市民活動支援の立場から、多くの市民活動団体に紹介をさせていただいておりました。当時は、「社会貢献活動」と「働く人」との距離はそれほど近しい関係ではなく、言い方を変えると別なものとして考えられていた時代だったように思います。そこから20年が経ち、内閣府が1974年より原則毎年調査をしている「社会意識に関する世論調査」によれば、「あなたは、日頃、社会の一員として、何か社会のために役立ちたいと思っていますか。それとも、あまりそのようなことは考えていませんか。」の問いに対して、「思っている」と答える市民が2022年の調査では64.3%存在しています。その貢献内容の選択肢には「自分の職業を通して」が含まれており、〈中央ろうきん〉の助成制度が開始された2003年には20%程度であった割合が徐々に上昇し、「中央ろうきん助成制度“カナエルチカラ”」と制度改革を開始した2020年には50%を超えてきていました。社会貢献活動そのものの価値が変化し、本助成のテーマである「生きるたのしみ」と「働くよろこび」の距離はかなり近い関係に市民の意識が変化し、手法や制度も構築されてきたと考えられます。本助成のテーマは、まさに現代の社会貢献活動の指標になるのではないかとさえ感じています。一方、活動現場に目を向けると、新型コロナウイルスの感染蔓延による影響はあったものの、組織改編や活動内容の状況に応じた対策を講じる姿が多く見受けられ、今できることを今始めるといった、新規事業の開始や新しい組織設立などもあり、市民活動のしなやかさを見ることができていました。そのような現況の中で、本年度の助成事業は開始されました。
本年度の応募総数は昨年度を上回る65件、地区選考の段階でも、選考委員から嬉しい悲鳴が上がるほどの件数の応募があり、困難を極めたのではないかと推察できます。続く本選考にはかなり時間をかけ、ディスカッションを重ねました。応募案件の傾向としては、やはり「生きるたのしみ」につながる福祉関連の活動が多いのですが、「働くよろこび」につながる可能性の見える活動も増えてきています。応募された活動は、どの活動も現状の社会的な課題や問題を捉えており、審査項目の必要性は十分に感じられるものの、実行性や協力性といった項目の文章による表現に物足りなさを感じる申請もありました。
本助成の特性として、まずは「働く」というキーワードに着目していることは勿論ですが、公的な補助や支援の対象とならない/なりにくい自主的かつ先駆的な活動への助成に焦点が当てられていることや、幅広い分野の活動の人件費や固定費への支援も含んでいること。そして最長3年間の「立ち上げ、定着、拡大・発展」という継続支援を可能にしていることが挙げられます。本助成の特性を十分に活用していただき、目指す未来に向け工夫を凝らし、持てる力を存分に発揮できる組織力を蓄え、「生きるたのしみ、働くよろこび」につながる自主的な活動を進めていただきたいと願っています。